世の中には素晴らしいものがたくさんあります。 それらを出来るだけ多く子どもたちに伝え残すことが、私たち大人の大切な役目だと思います。
しかし現在、子どもたちが置かれている教育環境を見ると暗然たる気持ちになります。 相も変わらず点数至上主義の傾向が強く、その結果、子どもたちは受験戦争から逃れられず、「心」の部分がないがしろにされて、それぞれの個性や人間性が大切にされていないように思えてならないのです。
人間として最も大切な「心」を置き去りにしては、明日を担う有能な人材が育たないと思います。 勉強が出来ることより何よりも「心」を豊かに、人間が人間である証である「感じる・感じ取る」という感性を育てていくことが大事ではないでしょうか? 小さい頃から芸術や自然に親しみ、その素晴らしさを感じ取れる心を持つことは、本当の意味で人間として豊かになることです。 それは、温かで穏やかな心を育み、ひいては平和な世界を築くことにもつながります。 もちろん1人の人間としても、生まれてよかったと思える有意義な人生を送る“手助け”になるに違いありません。
歴史そして人々の心に残っているのは、それぞれの時代の文化遺産であり芸術なのです。 長年にわたって積み重ねられてきた人々の足跡や思いの数々が芸術となり、人々の心を突き動かすのです。 国の豊かさは、物や金、経済力で推し量れるものではありません。 そうした文化遺産や芸術を守り、心豊かな人間を育てることが豊かな国の目指すべきところであり、今を生きるものの責任、特に教育の大きな使命だと思います。 改めて教育の責任の大きさを考えずにはいられません。
そこで、長年クラシック音楽に関わってきた私が今出来ることは何か、と考えました。 一つは、「クラシック音楽」を小中学生の子どもたちに、一流の演奏家による生の演奏を聴いてもらうことです。 場所は、大きなホールではない学校の音楽室や体育館で、出来るだけ身近で聴いて欲しいと思っています。 その結果、演奏家の息遣いや楽器の持つ魅力ある音と響きを、より一層感じることが出来ます。 そして子ども達はそこから生まれる、機械ではない人間の心から紡ぎだされる音楽に接することが出来るでしょう。 これらはより強い印象として子どもたちの心に残るに違いないと思います。 また中には傷ついた心を持ち、不登校になってしまう子ども、ハンディを背負っている子どもも多勢います。 そうした子どもたちは感性がとても豊かです。 そうした子どもたちのケアも念頭に置いての活動も視野に入れて行きたいと考えています。
加えて今の音楽界は、若い優秀な演奏家がたくさん生まれているにもかかわらず、日常的に演奏する機会になかなか恵まれない状況です。 彼らの為に演奏の機会を作ることも今後、目的の一つに加えたいと思います。
さて、子どもたちに聴かせる生の演奏の為に、音楽の面から支援協力していただける演奏家(世界的に活躍している方をはじめ東京藝術大学、桐朋学園大学の教授陣、NHK交響楽団の団員を含む)は、別紙の通りです。 一回限りの大規模なコンサートを開くことではなく、小さな規模でもいい、数多く続けて10年、20年後に花開く息の長い活動にしたいと考えています。
私たちの活動によって、子どもたちの“心の中のともし火”が一層の輝きを増し、平穏な社会を実現する上での一つの手助けになればと思っています。
NPO法人 「子どもに音楽を」
理事長
徳永 扶美子